29日ってミサとかやりそうだけど、休日ってことで!すみません時代背景分かりません…



誕生日だからという理由でマイケルはニールと共に街へ赴いていた。最初は構わないと断っていたが強い押しに流され結局何だかんだ家を出ていた。特別なことをして欲しいのか、そう聞かれたらノーと答えられる。普段より少し優しくしてくれればプレゼントは無くても満足だ。
と、思っていたのに、人が忙しなく通り過ぎ喧騒が辺りを覆うとたまにはこんな休みもいい、そんな気分になってくる。
心地好い風が頬を、髪を撫でる。擦り減った、夢中で駆け抜けた昨日までが新しい今日に変わる音がした。
「手でも繋ぐか?」
隣りを歩いていたニールが掌を差し出す。状況に戸惑いつつ、突然の提案に緩く首を振った。
「同性愛的だぞ、ニール」
実際本当のことだがふざけた冗談に付き合うなんて不必要だ。
「つれないな。お前さんの誕生日なんだから少しぐらいべたべたしたって主も見逃してくれるさ」
「別に今じゃなくったって家に帰ったらできるだろ」
「ほんとお前さんはかわいくないんだか、かわいいんだか分からんなあ」
一生分からなくていい。棘を刺す勢いで睨んだ。
そして横たわってる猫を尻目に近くの雑貨屋へ足を踏み入れる。
店内は仄かな光に照らされ、雑然と商品が置かれている。日用品から帽子やアクセサリーなど種類は様々だ。
店員はカウンターで読者に耽っていてこちらへ意に介さない。同じく、棚にあったネックレスを慎重に弄んでいるニールもマイケルの存在を忘れているようだ。
しばらく放っておこう、マイケルはニールの側を離れて他へ移動する。
きらきらと輝く一帯に導かれると、並べられた骨董品らしきものが存在を主張していた。
古臭さと華やかさを醸し出している置物が一つ、マイケルの瞳を捉えた。
二体の天使が背中合わせに寄り添い、手を繋いでいる。清らかな顔をしている者と穏やかな顔をしている者、等しい面であってそれぞれ違った雰囲気があり、頭の隅がいやに刺激された。
覚えている。現在に至っても消し去ることは出来ない。あの半身を――。
「欲しいのか?」
いつの間にか背の後ろに来ていたニールが置物をなぞる。繊細な動き。マイケルはうっとりとしながら、いや、と否定する。
「こっちの天使がガビィに似てて懐かしくなったんだ」
「そうか。……綺麗だな」
「ああ」
二人で眺める。
愛しい記憶が甦り、半分に千切れた儚い過去が暗闇から溢れてくる。
苦しくて、でも温かい。矛盾した心情に胸が締め付けられる。
「なあ、誕生日プレゼント、これにするか」
プレゼントをせがむ訳ではなかったのに。
「違う、欲しいんじゃないさ」
もちろん本音。
「遠慮しなさんな。ここで会ったのも運命だろ。……買ってくる」
勝手な。溜め息を吐き、仕方ないと諦める。意地になるぐらいなら素直になろう。
探していた解に納得し、悲しみを飲み込んで嬉しさが沸き上がる。
「……ニール、ありがとう」
「お前さんが喜んでくれるならお安いご用さ。それに今日ぐらいは尽くし倒してやりたいからな」
「なんだよ、それ。僕はいつだって貴方に甘えてる。だから一緒にいてくれるだけで満足だ」
「それを言ったらお互い様、だろ?」
ニールは肩を竦め、柔らかい笑みを浮かべた。マイケルもそれに頷くことで喜びを伝えたのだった。



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